先日見た夢。

今回の夢で『私』となっている女性は30代後半。田舎町の居酒屋でバイトしている。既婚者。
見た目も何もかも、現実の私とは違うが、便宜上『私』とする。

私の働く居酒屋の常連には西島秀俊似の無口なイケメン作業員がいて、お互いほのかに好意を抱いているようなのだが、私には夫と子供がいるため、進展はナシ。
といいつつ、実は私には、付き合っている男がいる。
数ヶ月に一度、たまに出張でこの街に来る、加藤さんという男性だ。
加藤さんは別に格好いいわけでもなく、魅力的なわけでもない。ただ、私の心の隙間にちょうどよかっただけの男だ。
だから別に、頻繁に会えなくても平気だし、寂しくなるわけでもない。
たまの気晴らし、そういう表現が一番しっくりくる関係。そういうことだ。

ある大雨の日。
ちょうど加藤さんが出張で来ていて、テーブル席で飲んでいる。つまみを運んだついでに加藤さんと談笑する私を、カウンター席の奥から、西島さんがちらりと見る。
そしてそんな西島さんを、もう1人のバイトの女の子、彩ちゃん(26)が見つめている。
彩ちゃんが西島さんを好きなのは、誰でも知っている。それを知られていないと思っているのは、彩ちゃん本人だけだろう。
そして同じように、私が加藤さんとそういう関係であることも、おそらく誰もが知っている。

雨が強くなってきた。
外でごうごうと音がする。様子を見に外に出ると、なんと目の前の川が氾濫寸前だった。
走ってお店に戻り、お客や従業員に、とにかく逃げるよう叫ぶ。

子供を。子供を助けなきゃ。

私の子供は、お店の裏手にあるアパートで留守番をしている。
階段を駆け上がり、子供を探すが、いない。夫が連れて避難したようだ。

階段を駆け下り、そのまま茂みをかきわけて裏山に登る。
表通りから神社に登る階段が一番便利だが、そこは川の目の前なので、もう危険だろう。
整備された道ではないので、草や泥に足をとられる。ふと見ると、もう足元にまで水がきていた。

このままじゃ、間に合わないかもしれない。
周囲を見渡すと、少し上の方に、同じように泥まみれになった加藤さんがいた。
加藤さんは私に気づいたようだが、また前を見て、1人登ってゆく。

見捨てられたか。

こんなときなのに、笑みがもれる。
そうね。愛情なんて元からなかった関係だもんね。
自分の命がかかっているときに、助けてくれやしないよね。
こんな関係しか築いてこなかったのは自分なのだから、加藤さんを恨むのは筋違いというものだろう。
あきらめてゆっくり登っていたが、水の流れが変わったのか、私は山頂まで逃げることができた。

山頂で一晩すごすと、ゆっくりと水はひいていった。
夫と子供と再会し、アパートへ戻る。1階の部屋は目も当てられない状態だったが、私達の2階の部屋は、たいしたことがないようだった。
子供を夫に任せて、お店の状態を見にいくと、彩ちゃんが泣きながら立っていた。
「西島さんが、死んじゃったの」

パニックになったお客たちの誘導は思いのほか大変だったらしく、常連客だった西島さんは、店員たちが避難した後まで、残ったお客を逃がそうとしていたらしい。そして、水にのまれた。
「西島さんみたいないい人が死んじゃって、どうしてあなたみたいな人が生き残るの」と、彩ちゃんは真っ赤な目で私を睨んだ。
「私、知ってたわよ。西島さんは、あなたが好きだった。それなのになんで、あんなどうでもいいオヤジと付き合うの?
しかもあなた、結婚だってしてるじゃない。卑怯よ。汚いわよ。」

そうだ。私は卑怯で、汚い。
そして、そんな人間だから、生きるか死ぬかというときに、付き合っていたはずの男にも見捨てられたのだ。

「加藤さんは、私のことなんか見捨てて逃げたわよ。私はそんな程度の人間よ」
「知ってる。知ってるわよ、そんなこと。でもきっと、西島さんならあなたを見捨てたりしないのに。どうしてあんなオヤジなのよ。西島さんの方がずっといいじゃない。なんでよ」
「・・・私と西島さんが付き合ってほしかったわけじゃないでしょう?」
「当たり前じゃない!でも、西島さんはちっとも振り向いてくれなかった。なんであなたみたいな人に・・・」

泣いている彩ちゃんを置いて、私はアパートに戻った。
本当に、どうしてなんだろうね。
悲しいのに、泣けない。


そして半年後。


泥まみれになったお店の改修工事も終わり、居酒屋の営業が再開した。
バイトを続けるのに抵抗はあったが、田舎町では他になかなか働き口もなく、それに、私は恥ずかしいと思うほどのプライドも持ち合わせていなかったので、以前と同じように出勤した。
お店に入ると、髪をばっさりと切った彩ちゃんがいた。

私の顔を見て、歩み寄ってくる彩ちゃん。
「あのね、話したいことがあるの」
「なにかしら」
「あの洪水の後、私随分と取り乱したけど。それであなたのことも責めたけど。もう、ああいうのやめたから」
「どういうこと?」
「あなたのことは許せない。でも、私が許すとか許さないとかじゃなく、西島さんが好きだったのはあなただったんだから、結局振り向かせられなかった私に魅力がなかったんだと思うの。だからもう、いいの」
「随分、さっぱりしたのね」

私は彩ちゃんの感情のことを言ったのだが、彩ちゃんは自分の短くなった髪に手をやり、少し微笑んだ。
「そうね、思い切って、短くしたの。」
話が終わったようなので、私はテーブルを拭くために背を向けたが、後ろで彩ちゃんがポツリと呟いたのが聞こえた。

「・・・だって、せっかく生き残ったんだもの。楽しく生きなきゃ、死んでしまった西島さんにも恥ずかしいもの。楽しく生きて、魅力的な女になるんだもの・・・今度は、あなたみたいな人に負けないような、魅力的な女に」

私は振り返れなかった。
見なくても、彩ちゃんがまぶしくて仕方なかった。

あれから2年。私はまだ居酒屋でバイトしている。
彩ちゃんは就職を決めて、遠くの街へ行ってしまった。
あれきり加藤さんは来ない。私のことは忘れたのだろう。



・・・・・・・・という、夢でした!
珍しく、尻切れトンボにならない夢だった。

それにしても、今回は『私』、かっこわるすぎる役どころだったな(笑)!!










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